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2.2.6 乗り物酔いのメカニズムの解明に関する3年間の基礎研究の総括
平成6年度より3年間に亘って行われた乗り物酔いのメカニズム解明に関する基礎研究の意義は極めて大きい、その理由として以下のように述べることができる。
?2.1において行われた関連する研究の実績・実態調査によって、本研究において取り入れたアプローチ手法は他に例を見ない新しいアプローチであることが示された。
?研究の初期段階からの医学・工学・人間科学等にまたがる真に学際領域におけるそれぞれの分野からの参加・協力は、単なる情報の共有ではなく、今後ますます重要となるであろう異分野からの研究者の有機的協力・連携の方向を示すものであると考える。
?研究成果は十分に上がったとは言えないが、その成果は船酔いのみならず、超高層ビル、超大型海洋構造物のような低周波動揺を余儀なくされる動的環境下において人体への影響が懸念される低周波動揺刺激の検討の方向を示した。
?近年多発している、Human errorに起因する重大事故の防止にとって不可欠であるHuman factorの把握のための方法を示した。
?PL法、ISO 9000等の、人間への配慮に関する諸基準の設定に必要な要因、方法を示した。であると考える。
特に、?、?に関しては以下に具体的な総括を行っておく。
1)日常の健康状態について
従来の乗り物酔いに関する研究においては、対象となる人間の日常の健康度と乗り物酔いの関連について言及した報告は殆どない。工学あるいは人間工学の分野における研究では全ての対象者は健康人であるとの前提で研究が進められたということができる。医学の分野においてさえも、この関係を陽に取り扱った研究は見あたらない。
本研究においては、身体的健康度、精神的健康度、遺伝的健康度の観点からアンケート調査、血液検査、生理学的検査によって日常の健康度の検討を行った。
a)アンケート調査による精神的健康度のチェック
アンケート調査では,
?大阪大学森本兼曩教授の推奨による日常のライフスタイルから見た健康度、国際的に広く用いられている
?性格・行動尺度および
?日常生活におけるストレス度、に、更に乗り物酔いの観点から
?本人の自覚による乗り物酔いに対する耐性度を加えたアンケート調査が、全ての被験者を対象として実施された。
その結果、精神的健康度を用いて被験者をタイプ分けできることが明らかとなると同時に、非常に多くの要因が乗り物酔いの発症に複雑に関与しており、特に、きまじめさで表現されるタイプAの性格を持つ人、ストレスを受けやすい人は乗り物酔いを起こしやすいと言う結果が得られた。この結果を確かめるために、多変量解析法の一つである数量化I類を用いて酔いとアンケート調査による健康度と関連を調べ、更に得られた多重相関係数を用いて全ての被験者を対象に酔いの程度の予測

 

 

 

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